婦人科の症状

月経異常について

女性は初潮から閉経までホルモン状態で月経周期を作っています。
脳にある下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH),黄体化ホルモン(LH)が分泌され卵巣に作用してFSHが卵胞を成熟させエストラディオール(E2)が分泌され、LHサージが起きて排卵がおこり、黄体からE2、プロゲステロン(P)が分泌されます。そしてE2、Pが出なくなると月経が始まります。これを妊娠しなければ繰り返すわけですが、何か異常が起こると無月経、月経不順になります。

無月経には第1度無月経、第2度無月経があります。第1度は多のう胞性卵巣等で起こりE2は分泌されているが排卵が起こらずPが分泌されていない状態です。この状況が長く続くと子宮体癌の前段階の子宮内膜増殖症、若年性子宮体癌になりやすいと言われています。第2度はE2もPも分泌されていない状況です。これはダイエット等で急に体重を減らした(体重減少性無月経)時などで起こります。これは更年期と同じ状態で放置していると骨そしょう症になり疲労骨折を起こしやすくなります。第1度も2度も無排卵なので妊娠できません。月経が無いから楽だと言われる女性も時々おられますが、将来のことを考えるときちんと治療すべきです。それも無月経になってから治療開始が早ければ早いほど回復しやすいといわれています。治療は挙児希望が無ければホルモン療法、希望があれば排卵誘発療法をおこないます。

性行為感染症(STD)

性感染症(STD:Sexually transmitted diseases)とは、性交渉でうつる病気の総称で、エイズのように死にいたる病気や、繰り返し発病する病気、将来、不妊症になる可能性のある病気、子宮癌になる可能性のある病気、自分の子供にうつる病気などがあり、最近、若い世代に激増しています。

  • 主なSTDの種類
    • カンジタ感染症
    • トリコモナス感染症
    • 淋菌感染症
    • 梅毒
    • 性器ヘルペス感染症
    • HPV感染症
    • クラミジア感染症

カンジダ膣炎は豆腐のかすのようなおりもの、外陰部のかゆみが主症状です。トリコモナス膣炎は黄色のおりもの、かゆみが主症状です。STDは若い世代で爆発的に増加しており特に、クラミジアは卵管の癒着、閉塞をおこし将来の不妊症の原因にもなり、またヒトパピローマウィルスは子宮頚癌の原因でもあり、これ以上広めない為にもコンドームは必ず使用しましょう。

梅毒

慢性の感染症で、何年もかかって進行していきます。近年患者数が増加しています。

《症状》
無症状のことも多く、気付いたときにはかなり進行していることがあります。

  • 第1期
    • 感染後約3週間で、感染した場所(性器・肛門・口など)に、できもの、しこり、ただれなどが出来ます。
      治療しなくても、数週間で症状は消えます。
  • 第2期
    • 第1期の症状が消えた後に、1~3ケ月経つと、手のひらや足の裏など全身に発疹やブツブツが出来ます。
      治療しなくても、数週間~数か月で症状は消えます。
  • 第3期
    • 症状がないまま何年も経過することがありますが、皮膚や内臓で病気は静かに進んでいます
  • 第4期
    • 数年~約10年後に、心臓、血管、神経の異常が現れることがあります。

《潜伏期間》
約3週間

《検査》
梅毒トレポネーマの検出または血液検査で診断する。検査は感染したと思われる時から4週間以上経過してから受けることが必要。

《治療》
抗生物質は有効で、菌を死滅させることはできても、臓器などに生じた障害を元に戻すことはできない。早期の治療が大切。パートナーと一緒に完全に治すこと。

《感染経路》
菌を排出している感染者との粘膜や皮膚の接触を伴う性行為で感染する。妊婦は胎児に感染させる可能性がある。

《免疫》
免疫は出来ず何度も感染する。

性器クラミジア感染症

日本で最も多い性感染症です。自覚症状がない場合が多く感染に気付かないことがよくあります。しかし、進行すると、不妊症や母子感染など様々な病気の原因になるので、きちんと治療する必要があります。

《症状》

普通は無症状です。症状があっても、おりものが少し増えるとか、軽い生理痛のような痛み、不正性器出血などですが、黄色い濃いおりものが出ることもあります(進行すると→卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症を起こすことがあります。)

《潜伏期間》
1~4週間

《検査》
尿や分泌液、おりもの、咽頭擦過物、咽頭うがい液の培養検査や遺伝子学的検査で診断する。血液クラミジア抗体を調べる検査は、過去に感染し、治癒した人も陽性となることがある。

《治療》
抗生物質が有効。決められた期間きちんと服薬しないと菌が残ることがある。必ず医療機関で診断を受け、パートナーと一緒に完全に治すこと。

《感染経路》
菌は、喉、直腸、尿にも出るので、口、肛門、尿を使った性行為も危ない。

《免疫》
免疫はできず何度でも感染する。

淋菌感染症

日本で最も多い性感染症です。自覚症状がない場合が多く感染に気付かないことがよくあります。しかし、進行すると、不妊症や母子感染など様々な病気の原因になるので、きちんと治療する必要があります。

《症状》

普通は無症状です。症状があっても、おりものが少し増えるとか、軽い生理痛のような痛み、不正性器出血などですが、黄色い濃いおりものが出ることもあります(進行すると→卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症を起こすことがあります。)

《潜伏期間》
2~7日

《検査》
尿や分泌液、おりものの培養検査をする。尿や分泌物で淋菌DNAを検査する方法も感度が良い。

《治療》
抗生物質が有効だが、耐性の淋菌も増加している。自己中断は耐性菌の発生をまねくため、必ず医師の指示に従い、パートナーと一緒に完全に治すこと。

《感染経路》
感染力は非常に強く、菌は、喉、直腸、尿にも出る。喉では症状がなくても他の人に感染させることがある。膿や分泌の付いた手で、目をこすると、結膜炎になることがある。

《免疫》
免疫は出来ず何度も感染する。

性器ヘルペスウイルス感染症

一度感染すると、ウイルスが体の中に住み続けて、何度も再発します。

《潜伏期間》
3~7日

《検査》
水ふくれを破って、内用液に含まれる感染細胞の件さ、血液検査で診断する。

《治療》
抗ウイルス剤の内服や軟膏、抗炎症剤、鎮痛剤などで治療する。

《感染経路》
性器、口、口唇、肛門などから感染する。無症状でも性器の粘膜や分泌液等にウイルスの排出がみられている場合は感染する。

《免疫》
一度感染すると体内にウイルスが残り、再発しやすい。

尖圭コンジローマ

外陰部に小さな尖ったイボができる病気です。イボができないこともあり、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないので、感染に気付かないことがあります。

《症状》

普通は無症状です。症状があっても、おりものが少し増えるとか、軽い生理痛のような痛み、不正性器出血などですが、黄色い濃いおりものが出ることもあります(進行すると→卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症を起こすことがあります。)

《潜伏期間》
数週間~3ケ月

《検査》
特徴的なイボを確認することによって診断する。

《治療》
外科的治療や薬物塗布を行う。外科的治療法としては、切除、電気焼灼、液体窒素による凍結療法、Co2レーザー蒸散などがある。

《感染経路》
ウイルスはイボの中に多く、性行為の時に皮膚や粘膜の微小な傷から侵入する。

《免疫》
免疫はできず何度でも感染する。再発がしばしばある。

膣トリコモナス症

外陰部に小さな尖ったイボができる病気です。イボができないこともあり、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないので、感染に気付かないことがあります。

《症状》

一般に女性に強い症状が出ます。症状が出ない場合でも、治療をしないと他の人に感染させることがあります。

《潜伏期間》
1~3週間

《検査》
分泌液を顕微鏡で検査する。必要に応じて培養検査や遺伝子学的検査を行う。

《治療》
抗トリコモナス剤の内服薬や膣錠で治療。特に妊娠中の治療は、必ず医師の指示を守ること。

《感染経路》
性行為感染

《免疫》
免疫はできず何度でも感染する。

性器カンジダ症

カンジダは真菌(カビ)の一種です。性行為で感染しますが、健康な人でも体内に持っていることがあるので、性器からカンジダがみつかったとしても性器カンジダ症を発症しているとはいえません。また、感染したからといってすぐに発症するわけでなく、抵抗力が落ちた時などに発症します。

《潜伏期間》
何年にも及ぶことがある。

《検査》
分泌物を顕微鏡で検査する、必要に応じて培養検査を行う。

《治療》
治療が必要な場合には、抗真菌剤の入ったクリーム、膣剤などを使用する。抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤では悪化するので、必ず医師の指示に従って治療すること。

《感染経路》
カンジダは健康な人でも体内に存在することがある。潜伏期間が長く感染経路は様々なので、感染機会が分からないことも多い。常在菌として持っているものが増殖すると、性行為で感染する場合がある。

《免疫》
個人差はあるが、抵抗力が落ちた状態や妊娠時に発症・再発しやすい。

B型肝炎

B型肝炎は、急性と慢性に分けられます。母子感染では90%が慢性化し、大人になってからの感染で慢性化するのは2%~6%と言われています。20歳代~50歳代の急性B型肝炎の感染経路として性行為は重大な感染経路です。慢性化すると、肝硬変やがん等、健康に重大な影響を及ぼします。予防には、予防接種が効果的です。

《潜伏期間》
※急性肝炎の場合1~6カ月

《検査》
血液検査により診断する。検査は感染したと思われる時から、100日(3ケ月程度)以上経過してから受けることが必要。

《治療》
治療によりウイルス量を減らし、肝障害の進行を抑えることができるので、早期に発見し、治療することが大切。

《感染経路》
血液、精液、膣分泌液に多く含まれていて、粘膜や傷口から感染する。主な感染経路は、性行為感染、母子感染及び注射針の回し打ちなどの血液を介しての感染の3つ。

《免疫》
感染予防するワクチンがあります。平成28年10月より乳幼児の定期予防接種になりました。

HIV感染症・エイズ(後天性免疫不全症候群)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により起こる病気です。病気が進行すると、次第に抵抗力が弱まり、健康なときなら心配のないようなウイルス、最近、カビなどの病原体によって、色々な病気が引き起こされます。

《潜伏期間》
数年~10数年

《検査》
血液検査により診断する。検査は感染したと思われる時から、60日以上経過してから受けることが必要(即日検査は原則90日以上)。

《治療》
服薬治療により、エイズの発症を抑えられることから、早く知って、治療することが大切。HIV感染症を完全に治療する薬はまだ開発されていないことから服薬の継続が必要。
治療によりウイルス量が検査で測定できないほどのわずかな量にまで抑えられ、他の人への感染の可能性が低くなる。

《感染経路》
HIVは、血液、精液、膣分泌液に多く含まれていて、粘膜や傷口から感染する。主な感染経路は、性行為感染、母子感染及び注射針の回し打ちなどの血液を介しての感染の3つ。

HPV(ヒトパピローマウイルス)

尖圭コンジローマの他、子宮頸がんの原因にもなるウイルスです。HPVは100種類以上あり、このうち約15種類が子宮頚がんの原因になると言われています。HPVは主に性行為により感染し、女性の約80%が一生のうちに一度は感染するという、ごくありふれたウイルスです。
感染は一時的で症状もないことが多く、自然に消えることがほっとんどですが、まれに子宮頸がん原因にとなるHPVの感染が長期間持続すると、その一部が、数年から10数年後に子宮頸がんを発症すると考えられています。HPVのうち、子宮頸がん予防ワクチンを接種することで予防効果があると報告されています。ワクチンは、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸がんの進行を遅らせる効果はありませんので、感染前に接種するのが最も効果的です。また、ワクチンだけで、子宮頸がんを完全に予防できるわけではありませんので、定期的に子宮頸がん検診を受け、早期発見を心がけることが大切です。